鍼灸(しんきゅう)とは?鍼灸の治療を行なうために必要な資格はある?

資格解説  |

東洋医学の代表的な施術の1つ、鍼灸(しんきゅう)。鍼灸は、外科手術や薬物治療などの西洋医学が浸透する以前から行われている、大変長い歴史を持つ治療法です。
西洋医学の治療のような即効性はありませんが、体の不調を根本原因から取り除くことができる治療法とされています。

東洋医学の考え方

まずは、普段知る機会の少ない東洋医学の考え方からお伝えします。
東洋医学では、「気」・「血」・「水」の3つの要素が、身体を支えていると考えられています。合わせて「気血水(きけつすい)」と呼ばれ、互いに影響し合いながら身体を巡っていると言われています。
それぞれの役割については、以下の通りです。

・気…身体を動かすためのエネルギー。生命活動のためには欠かせず、食事や大気から取り込むことができる。
・血…血液そのものや、血液中の栄養素。栄養や酸素を全身に届ける。
・水…リンパ液や汗など、血液以外の体液。免疫力やうるおいを保ち、老廃物を排出する。

この中でも気は、生命活動のためには欠かすことができない存在です。気が流れている「経絡」上にあるものが、「経穴(ツボ)」。この経穴を刺激して、気のバランスを整えるのが鍼灸師です。

鍼灸とはどんなもの?

鍼灸はその名の通り、「鍼(はり)」と「灸(きゅう)」を使う治療法です。体にある経穴(ツボ)を鍼と灸で刺激することにより、体の不調の回復を目指します。

細い鍼を使う「鍼治療」

鍼治療では、ステンレス製などの鍼を経穴に刺していきます。使用する鍼はごく細く、髪の毛と同じくらいの太さのものが一般的です。そのため、施術を受ける人は基本的に痛みを感じません。

もぐさを使う「灸治療」

灸を使う治療では、乾燥させたヨモギの葉の裏側の部分だけを集めた「もぐさ」を使い、熱で経穴を刺激します。
灸の方法には、もぐさを直接皮膚の上に載せて火を着ける「直接灸」と、皮膚の上に緩衝材となるものを置き、その上にもぐさを載せて火を着ける「間接灸」があります。間接灸の緩衝材としては、味噌や薄く切った生姜、にんにくなど、自然由来のものが主に使われます。

鍼灸師は資格が必要

鍼灸の治療を行なうためには、専門の国家資格が必要です。資格を持たない人が鍼灸治療を行なうと、法律違反となってしまいます。
「鍼灸師」という資格は存在せず、「鍼」の治療を行なうために必要な「はり師」と、「灸」の治療を行なうために必要な「きゅう師」に分かれています。そのため、鍼灸どちらの治療も行うのであれば、「はり師」と「きゅう師」の資格をどちらも取る必要があります。

鍼灸師の資格はどうやったら取れる?

鍼灸師の資格を取るためには、国家試験に合格しなければなりません。鍼や熱を使うため、一定以上のスキルがないと患者さんを傷つけてしまうおそれがあるからです。国家試験を受けるためには、以下のいずれかの学校で一定のカリキュラムを修める必要があります。

・鍼灸系の専門学校
・鍼灸学科のある4年制大学
・鍼灸学科のある3年制大学

所定の学校でカリキュラムを履修し、そして年に1回行われる国家試験に合格して、初めて鍼灸師の資格が取れるのです。

鍼灸師の国家試験の受験資格を得られる学校は、全国にあります。住んでいるところの近くの学校に行くことももちろんいいですが、就職のことまで考えるのであれば、働きたい地域にある学校に通うと良いでしょう。
例えば東京の鍼灸院で働きたいと考えるのであれば、東京の鍼灸系専門学校に通うことがおすすめです。働きたい地域にある学校に通うことで、学生のうちから地域性に馴染むことができ、就職後により働きやすくなるためです。

鍼灸師が活躍できる場は?

鍼灸師が働く場所というと、鍼灸院やクリニックなどがまず真っ先に頭に浮かぶかと思います。しかし、鍼灸師が活躍できる場所はそれだけではありません。スポーツ分野や美容分野などでも、鍼灸師は求められています。

スポーツ分野の鍼灸師

プロ・アマチュアを問わず、スポーツをしている人に対して鍼灸治療を行います。スポーツによって起こる不調やケガを、予防したり回復したりします。
スポーツ分野で活躍する鍼灸師になるためには、スポーツ医学に関しての知識が欠かせません。マッサージやテーピングなど、鍼灸以外のスキルが必要となるでしょう。時には、選手のメンタルケアによって精神面もサポートします。

美容分野の鍼灸師

美容に関するお悩みに対し、鍼灸治療でアプローチします。しわやたるみ、くすみ、肌荒れなど、悩みに合わせたツボを刺激することでケアします。また、ホルモンバランスを整えたり、血流を良くしたりなども行います。
本来身体に備わっている自然治癒力を活かすことから、美容皮膚科などで行われるレーザー照射や薬剤塗布などに比べると、副作用の心配があまりありません。そのため、美と健康を気にする方々からの人気が高まっています。

まとめ

鍼灸は一過性の治療でなく、体が元々持つ回復力を高め、体を内側から元気にする治療とされています。東洋医学が見直されている今の時代、ますます鍼灸師の需要は高まっていくことが予想できます。
鍼灸師を目指す方は、国家資格取得を目指せる学校を探してみてください。その際、働きたい地域にある学校を選べば、学生のうちから地域性に馴染むことができ、働きやすくなります。

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